数年前に新築の間取りをご相談いただいた、今も継続のお客様がいます。
お客様の個室は6畳ほどで、ベッドと造作デスク、壁掛けテレビを配置し
洋服やバッグを多くお持ちだったため、2畳ほどのウォークインクローゼットをご提案しました。
それからしばらくして、「自分の部屋を片付けてほしい」というご依頼を受けました。

モノが増え続ける部屋の実態
訪問すると、お部屋には健康器具や美容器具、健康ドリンクがあちこちに。
クローゼットからは洋服やバッグがあふれ、床にも積まれています。
ほとんどが1〜2回しか着ていない服や値札がついたままの服ばかり。
普段は仕事着で過ごし、おしゃれ着を着る機会はほとんどないそうです。
すべて「気に入っている」とおっしゃいますが、よくよく聞くと、それらは「なりたい自分」とは少し違うものでした。
「どうして買ったんだろう…」と、ご本人も不思議そうにされる瞬間がありました。
忙しすぎる毎日が買い物を呼び寄せる
このお客様はフルタイムで働き、さらにご家族の介護も担っています。
働き方改革があったのに、実際は自分のパフォーマンスのほぼ100%を仕事に充てている人は少なくありません。体力の限界まで仕事して、家事・育児もこなさないといけない。
自分の時間なんてとれるわけもないですよね。
彼女も数時間とれた在宅時間は、仕事の質を落とさないために高価な健康グッズで自己管理しています。そうしないと「今のようには働けない」と彼女は話します。
ドーパミンと買い物心理の関係
人は買い物をする瞬間に脳からドーパミンが分泌されます。
これは、ギャンブルやゲームなどにも共通する「ワクワク感」や「幸せな気持ち」を生み出す物質です。
実際に使う瞬間よりも、「買ったとき」に一番気持ちが高まることも多いのです。
忙しい日々の中で、買い物は短時間で手に入る「楽しい時間」
一時的に疲れを忘れさせてくれるため、わたしは否定しません。
ただ、その高揚感は長く続かず、気づけば部屋には使われないモノが積み重なっていきます。
お客様への提案
私はこのお客様に、たくさんある洋服の中から「格下げ」できそうな服を選び、仕事着にしてしまうことをまず提案しました。また、近所のスーパーへの買い物もグレードアップした服装で行くのです。
お気に入りの服を普段から着ていると、周囲から「いつでもおしゃれね」と声をかけてもらえるかもしれません。
褒められることで、本人の気持ちも満たされ、クローゼットの中の服も活かされます。
実は、この褒められるという行為には、科学的に見ても驚くべき効果があります。
褒められると分泌される3つの脳内物質
人は褒められると、脳内でドーパミン・セロトニン・オキシトシンといった物質が分泌されます。
これらは「幸福感」「やる気」「安心感」に直結する、大切な脳内物質です。
ドーパミン:喜びや快感を感じさせ、意欲を高める働きがあります。
セロトニン:精神を安定させ、リラックス効果をもたらします。
オキシトシン:人との絆を深め、幸福感や安心感をもたらします。
つまり、褒められることで心も体も前向きになり、日々の行動やモチベーションにも好影響を与えてくれるのです。
「今ある服」を活かす片付け術
クローゼットの中に眠っているお気に入りの服やバッグは、ただ保管しておくだけではもったいないもの。
片付けの中で「格下げできそうな服」を見つけ、日常で着る機会を増やしましょう。
そうすれば、鏡を見ている自分も楽しいし、もしかしたら周りからも褒められたりして、脳内の幸せ物質もアップ。
「お気に入りを日常使いする」ことが、心と暮らしの両方を豊かにしてくれます。
片付けはモノを減らすだけじゃない
片付けは、単にモノを減らす作業ではなく、持っているモノをどう活かすかを考える時間でもあります。そして、その活かし方次第で、人との関係や自分の気持ちも変わっていきます。
お気に入りを身につけて、
ドーパミン・セロトニン・オキシトシンをたっぷり分泌しながら暮らす。
そんな毎日は、片付けから始まる「最高のご褒美時間」になるかもしれません。
片付けは単なる整理整頓ではなく、こうした買い物心理や自分の生活習慣を見直すきっかけにもなるんですよ。